性犯罪に関する刑法が2017年に実に110年ぶりに改正されたことをご存知でしょうか。
現在の刑法が制定されたのは1907 年(明治40年)。その間時代の流れに応じて幾度となく見直されてきた刑法ですが、性犯罪については一度も改正されることはありませんでした(*1)。
そのため、被害の実態に合わないケースが多く、加害者が無罪になることも少なくない現実があります。
それでは実際にどのような改正がなされたのか、詳しく見ていきましょう。
2017年の改正内容の大きなポイントは以下の4つです。
性別を問わなくなった
厳罰化された
非親告罪となった
保護者や看護者が加害者となるケースの新設
〈 改正内容 〉
今回は本改正について私の率直な意見について記させていただければと思います。
結論から言って、今回の改正は大きな一歩を踏み出したとは思いますが、同時に疑問も多く残っています。
具体的に例えば、強制性交等罪については改正前からそうでしたが、争点は「暴力または脅迫を用いた」かどうかです。また、加害者が合意の上だったと主張し、被害者が拒否したことを証明できなければ無罪となる可能性もあります。
この点は改正前後で解決できていません。拒否したことの証拠は被害者の証言に依存することがほとんどで、ショックを受けている中で被害に遭った状況を証言すること自体ハードルが高くただでさえ難しいと思います。
私自身、性暴力の被害を経験しておりますが、ただ突然抱きしめられるだけでも女性にとっては恐怖でしかなく、怖くて言葉も出ません。
まずは命を守ろうと必死で考えるでしょう。拒否したら殺されるかもしれないと思う人が大半なのではないでしょうか。
実際、私は自身の母親からも、おそわれたらまず命を守ることを考えるようにと常々言われてきました。もし性交を強要されても、引き換えに命が助かる可能性があるのなら拒否できるかわかりません。
ですが今の法律では命を守るためであっても拒否できなければ罪に問えないケースが多いと感じます。2019年の3月に各地裁で相次いで性暴力事件(*2)に関し無罪判決が言い渡されたことは世間に衝撃を与えましたが、これらの判例を見ると拒否しているにもかかわらずその意思が加害者へ伝わっているかどうかも判断材料となっており、相手にも伝わるような明確な拒否を示していないと判断され無罪となってしまっています。
また、わたしが個人的に解せないのは、監護者による性暴力の要件です。新設された監護者わいせつ罪と監護者性交等罪の内容の中で、監護者であることによる影響が生じているかどうかと記載があります。実の親子というだけで十分に影響があると感じますが、実の親であっても別居していれば監護者とみなされないため同意なく罪を問われるのは13歳未満、つまり別居している親から性暴力の被害に遭ってしまった13歳以上の被害者は強制性交等罪の適用となり、暴行または脅迫がないと罪には問えなくなります。監護者による性暴力はそもそも発覚するまでに時間を要する事件が多く、被害者が声をあげられるようになった時には時効(10年)が成立してしまうケースも多々あるようです。
このように改正されたことは非常に大きな一歩のようにも感じますが、そもそも110年間も見直されなかったことがおかしく、残念ながら現実には改正されたことで被害者たちの救いになっているかどうかあやしく思います。
とはいえ課題が多くあることは認識されており、実際に現在法務省の法制審議会において更なる改正の検討がされています。
前記事の性交同意年齢とはとともに、これらの課題についても改正されることを強く願います。
(*1)日本法令索引(https://hourei.ndl.go.jp/#/?back)で「刑法 改正」と検索すると過去の改正について確認することができますが、そこには性犯罪に関する改正の実績はありません。
(*2)参考URL:https://www.flowerdemo.org/blank
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