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執筆者の写真延川美沙

#Don't be that guy

「ああいうやつにはなるな」


これはスコットランドヤードと呼ばれるイギリスのロンドン警視庁が始めたキャンペーンで、女性に対する性暴力を防ぐため、男性に行動を見直すよう呼びかける活動です。


今年10月にロンドン警視庁がSNSで公開したこちらの動画の再生数は現在291万回を超え、リツイートを含めると3.2万件をも超える意見が寄せられており、その大半がキャンペーンへの賛同のコメントです。


「性暴力は、あなたが思うよりずっと前から始まっている。”ああいうやつ”にはなるな」

と動画は締めくくられています。


▼動画はこちら



多くの警察が性暴力の被害に遭った女性たちに対し、「夜道を1人で歩かない」「露出を控えるように」などの対策を指導する中、こちらのキャンペーンでは、性暴力の加害者になりうる男性に対し、「こんなことをしていないか?」「それはもう性暴力の始まりなんだ」と訴えています。


このキャンペーンは、男性の発言や行動を気にすることなく、女性がもっと安全に自由に生活できるような社会作りを目指し、男性同士でさまざまな問いかけをしあい、女性に対する発言や行動についての意識を改善する目的で始まりました。

なぜ今このようなキャンペーンが始まったのか、その背景にはある1つの事件がありました。


今年3月、ロンドンで33歳の女性が行方不明となり、1週間後遺体で発見されるという事件がありました。女性は性的暴行を受けた後に殺害されており、犯人として逮捕されたのは現職の警察官でした。ロンドン市内で衝撃が走ったこの事件を受け、英首相官邸は女性の安全確保を強化するための緊急対策として「安全な道」基金の予算に4500万ポンド(日本円にして約68億円)を投じることを決定し、街灯や防犯カメラの増設、クラブやバーへの私服警官の配置を増やすなどの対策を約束しました。


しかしながらイギリスでは何十年も前からこのキャンペーンの通り、被害者となる女性が行動を制限されるのはおかしいと声をあげている人たちがいました。そのきっかけはやはり男性による女性殺害事件で、1975年に13名もの女性が男に襲われ殺害されたヨークシャー・リッパー事件です。


当時犯人逮捕に苦戦していた警察は、女性に対し夜間の外出禁止を指示しました。これに対し男性にこそ外出禁止を指示すべきと激怒した女性たちを中心に、イギリス全土で「Reclaim The Night(意味:夜を奪還せよ)」という大規模なデモ活動が起こりました。結果的に、犯人は1981年に逮捕されましたが、警察側の売春婦に対する差別的感情や、女性に対する性差別的な推測、間違った情報への固執のせいで、もっと早い段階での犯人逮捕に繋がったであろう多くの重要な証言や証拠が無視されていたことが逮捕後に発覚し、被害者の遺族が警察を訴えるまでに発展しました。


そして今回の33歳の女性が殺害された事件でも、警察が女性に対し外出を控えるよう発言したことを受け、再びイギリス全土で抗議の声が上がり、「Reclaim These Streets(意味:ストリートを奪還せよ)」というデモが新たに起こりました。ただ一つ「Reclaim The Night」と違ったのは、今回は事件を知った全く無関係の複数の男性がSNSで「僕たちにできることはありますか」と発信したことです。被害に遭うかもしれない多くの女性たちだけではなく、大切な人を守りたいと思っている男性たちの存在が本キャンペーンのきっかけの要因になっているのかもしれません。


各国において、常に事件が起きてからの対応になってしまっていることは非常に残念ではありますが、海外諸国の動きを自国にも取り入れながら新たな対策をいち早く講じられるよう、日本においても被害者が我慢し、妥協し、怯えながら過ごす生活をしなくても良い意識の改善が求められることでしょう。


性暴力の加害者はもちろん男性だけではありません。ただ、現状では男性が圧倒的に多くなっています。ぜひ多くの方に、このTHAT GUYの記事に目を通していただきたいです。罪に問われていないとはいえ、思い当たることがいくつかあるのではないかと思います。そして意識の改善をすること、これが本当の意味での性暴力事件の根絶に繋がるのではないかと感じます。


全ての方が安全に、安心して暮らせる社会になることを祈っています。




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